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自分の特徴を気づかせてくれる素晴らしいツール!!
吊り輪は体操競技としての難易度の高い技のイメージが定着しているので、一般的にはなかなか取っ付きにくい感じがあります。しかし、トレーニングの手段としてはとても歴史が深く、吊り輪の特徴とプログラム理解すれば、有効なトレーニング手段というだけでなく、自分の特徴を再認識させてくれる素晴らしいツールです。
原始的だが体にやさしく、バランスよく、しかも効率的
吊り輪の特徴とえいば、その不安定性です。不安定だからこそ、ちょっと重心を外すとたちまちバランスが取れなくなってしまいます。
上手くバランスのとれる範囲内でトレーニングを続けバランスが良くなれば、もっと広い範囲でバランスがとれるようになり動きのクオリティーが上がって行きます。例えば、鉄棒にぶら下がるという状態では鉄棒の性質上、『順手』か『坂手』しかありませんが、自由度の多い吊り輪では、その順手と坂手の間の180度内でたくさんの安定する角度を見つけトレーニングすることが出来ます。ある程度体についての知識があれば非常にトレーナビリティの高い器具だと言えます。
吊り輪の歴史
1896年 アテネオリンピック |
近代オリンピックではドイツの有力者が競技としての骨組みを作ったことにより1924年のパリ・オリンピックから体操競技の正式種目となります。しかし、その歴史は非常に長くもともとは『ローマン・リング』と呼ばれていたおり、およそ二千年以上前から何らかのトレーニングの方法として、あのローマ帝国の体力強化に貢献していたと考えられます。ミケランジェロのダビデ像をはじめ、ミュロンの円盤投げなどローマ時代の彫刻は肉体的でバランスが良いものが多いのは、戦争が絶えなかったこの時代背景からも、トレーニング方法が原始的であっても今よりも発達していたと想像出来ます。
ミケランジェロのダビデ像 |
ミュロンの円盤投げ |
古い空気を吐き、新しい空気を吸い込んで、深い呼吸を心がけ、木に熊がぶらさがるのを真似してみたり、鳥が身を伸ばすのを真似してみたりして、やることなすこと長生きのためばかり。これは導引を修める人、肉体を鍛える人、彭祖(ほうそ)に憧れるような人によく見られます。『荘子』(刻意篇)— 荘周(荘子と呼ぶ人も) (@Zhuangzishuo) November 27, 2015
2300年前に東洋でも自然体に生きることの大切さを説いている荘子は意図的にトレーニングすることにはあまり好意的ではありませんでしたが、しかし、ぶら下がることはからだ良いことだと記録を残しています。
吊り輪は2種類競技だった?!
1. スティル(静的)・リング
1862年の医学的な見地からのプログラム |
スティル・リングは現在体操競技として見る形のもので、筋力、バランス持久力、タイミングのすべての要素が必要な競技です。19世紀前半には体操プログラムとして存在しており、2つの中ではよりコントロールと安全性を重視したものです。1924年のパリオリンピックで正式種目となり現在に至っています。
2.フライング・リング
まとめ
吊り輪は2000年以上という非常に歴史の長い間使われて続けているトレーニングツールです。私も、ここ数年吊り輪を主流にしたトレーニングを行うようにしていますが、その歴史だけでなく、非常に人のからだにとってとれも深いフィードバックをしてくれるトレーニングツールだと感じており、現在フィットネスの主流とされているトレーニングツールは歴史もその影響力も足元にも及ばないと思います。ダンベルやマシーンを使ったトレーニングは短期的に結果を残そうと言う時代の風潮がよく表れており、バランスやアライメントはあまり重要だとなかなか感じることが出来ません。
また、近代オリンピックが開催されて以降はこれが競技となりますが、歴史上一つの競技が姿を消しているということも大変興味深い事実です。同じ器具を使って行っている二つの競技が、片方は悪影響を及ぼす可能性があると判断され。多少地味だが体のコントロールと安全性をより重視した方が選ばれ発展を続けているということは、数あるトレーニング方法や練習方法への歴史的教訓になるのではないでしょうか。
初心者でもベテランでもトレーニングに興味がある方は、是非吊り輪を体験してみることをお勧めします。きっともっと素直に自分に向き合うことが出来ると思います。
参考;
・History of Rings
・Climbing and Gymnastics
・Gymnastics rings” Athlepedia
・The History of Gymnastic Rings
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