しっかり睡眠、パフォーマンスアップ!

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睡眠時間の変化だけで体には相当のストレス

睡眠時間の変化・減少だけで風邪をひく?!

睡眠時間の2〜8%(平均睡眠時間が8時間としておよそ10〜40分)眠れなかっただけで、すぐに寝ついた人と比べて風邪の罹患率が5倍にもなったという研究があります。”2〜8%”とは一見大した数字とは思えません。しかし、睡眠段階的に色々な脳波により形成されており、たった10〜40分の変化が睡眠のクオリティーと深く関係しているようです。

また、7時間以下の睡眠をとる人は、8時間以上の人に比べて3倍以上風邪の罹患率が高いことも報告されており、睡眠と風邪のかかりやすさには確かに関連があるようです。睡眠時間の長さとクオリティーの相関性は別の問題としても、風邪の予防のためにはより長い睡眠をとることは有効な手段と言ってもよいでしょう。

参考:かぜの科学:もっとも身近な病の生態 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) ジェニファー・アッカーマン (著), 鍛原多惠子 (翻訳)

 

上手く寝れないだけで生活習慣病上昇



1日の睡眠時間が5~6時間以下の人は糖尿病発症のリスクが28%上昇します。また上手く寝付けないとリスクが48%上昇、なんらかの理由で睡眠を継続出来ないとリスクが84%も上昇します。このデータからは、実際の睡眠時間よりも睡眠中の障害がリスクを上昇しているように読み取れます。

また、循環器の病気に関しては5~6時間以下の睡眠でリスクが48%上昇、心筋梗塞のリスクは38%上昇、脳梗塞のリスクは65%も上昇します。

これだけ病気のリスクが高くなれば、必ず平均寿命にも反映します。5~6時間以下の睡眠では寿命が12%も短くなります。一方、8時間以上の方の寿命は30%も長くなっています。

参考:Sleep Quickie: Sleep Restriction ➲ Blood Amino Acid Levels ↑, Glucose Levels ↓ ✰ Food ↻ Sleep & Exercise Interactions ✰ Melatonin, A Safe Sleep Aid W/ Anti-Alzheimer’s Effects

睡眠のクオリティーは骨の健康状態にも影響

また睡眠時無呼吸症候群は骨粗鬆症になりやすいなど、睡眠のクオリティーは骨の健康状態と深く関わっています。

参考:Sleep Apnea May Be Linked to Poor Bone Health

睡眠不足の生理的反応

睡眠不足になると12種類のアミノ酸とその代謝物(イソロイシン、フェニルアラニンなど…)が上昇し、血液中の脂肪酸や胃酸やステロイドホルモンも上昇します。また脳や神経の栄養素となる糖の代謝に影響が出るため、食事の時間や回数が増えたり、心理的ストレスにより過食気味になります。糖尿病発症のリスクが30%ほど上昇するのも筋が通ります。

睡眠がグリコーゲンの再合成に大きく影響

睡眠不足は体の生理的な反応に大きな変化をもたらします。エクササイズ30時間後の筋肉中クリコーゲン濃度は睡眠不足のアスリートでは30%程も低下していることが分かりました。一般的に糖質補給というと食べる事にばかり捉われがちですが、実は十分な睡眠をとることの方が大切なのかも知れません。

参考:Sleep deprivation can decrease glycogen resynthesis

睡眠によって脳の老廃物が洗い流される

Image cortesy: wikimedia.org
では睡眠によって体にどんな変化が起こっているのでしょうか?ニューヨークのある研究者によると、起きて活動している間に神経の間質空間にニューロンやグリエル細胞などの神経活動の老廃物(アルツハイマー病で原因としてよく知られているβアミロイドやタウも含む)が溜まります。睡眠によってこれらの老廃物が除去され間質空間は60%も増えるということです。これらの老廃物は脳脊髄液の循環などにより血液中に送り出され肝臓などで解毒されます。
おそらく睡眠がグリコーゲン再合成などの糖代謝と深く関わっているのは、この老廃物の蓄積が原因と考えたられます。神経の唯一の栄養素は糖であるグルコースです。上手く睡眠がとれずに間質空間が老廃物で満たされてしまうと、浸透圧などの問題から細胞にエネルギー供給が滞り、糖の代謝自体も滞ってしまうのだと考えられます。

長く寝るだけでパフォーマンスアップ

また、ある大学の研究では長く寝るだけでアスリートのパフォーマンスが向上しています。睡眠不足は認知力、記憶力や感情の安定性を失い、眠気を起こすなど人間の機能を低下させるとの前提から、大学のバスケットボール選手に10時間以上の睡眠を取ってもらい、パフォーマンスを計測しました。この研究は予想以上の結果をもたらしました。ダッシュなどの走力が向上、フリースローも3ポイントもシュート率など正確性の向上、疲労度軽減、精神的にも肉体的にも充実度が向上しています。

参考:The Effects of Sleep Extension on the Athletic Performance of Collegiate Basketball PlayersCheri D. Mah, MS, Kenneth E. Mah, MD, MS, Eric J. Kezirian, MD, MPH, and William C. Dement, MD, PhD

朝練やトレーニングには余裕を持った時間設定を!

このように睡眠は回復だけでなく、パフォーマンスにおいてもとても重要な要因であることが明らかです。そして、疑問になるのが睡眠を削ってまで行う”朝練”は果たして効果があるのでしょうか?

アスリートの平均的睡眠時間は6時間30分というデータがあります。23:06に就寝し、6:48に起床というのが平均的なようですが、トレーニングのある日はスケジュールの都合上より睡眠が短くなる傾向があります。6時間半という睡眠時間は既に体を作るためには短いように思えます。また朝練に為にさらに睡眠時間が少なくなっているので、練習に集まった時点で既に相当のストレスを感じ疲労しやすい状態であることが分かります。

参考:Sargent C, Lastella M, Halson SL & Roach GD. Chronobiol Int, September 2014

まとめ: 『寝る子は育つ!』

これは揺るぎのない事実なのでしょう。子供は眠くなると機嫌が悪くなりますし、泣いたりもします。このような自然な生理的現象にも脳や神経の間質空間に老廃物が溜まり糖代謝の阻害がおこっています。偉人はあまり寝ないという固定観念を持って学生時代を過ごして来ました。勉強のための徹夜もたくさんしましたし、運動のため睡眠を削っていました。そして、今思うことは「もっと寝ておけば良かった。」また、リサーチでは”睡眠の質”を”睡眠の量(時間)”で代用している傾向がありますが、10時間の睡眠は現実的ではないように思えます。大人になってからの睡眠はタイミングや質を工夫し快適な間質空間の維持心掛けることが重要です。受験シーズン真っ只中ですが、仕事も運動も勉強もパフォーマンスの向上には快適な睡眠がカギを握ります。

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